ソランが旅立って10日後。

姉が買い物に連れ出してくれました。

後部座席に乗って、ボーっと窓から外を見ていました。

すると、そこに思いもよらぬ光景が目に飛び込んできました。





「ヨーキーが!ヨーキーが!!」





私は大きな声をあげていました。

姉が何事かと、急いで車をとめました。





「なんなの!?」

「ヨーキーが歩いてたの!!」

「ええ〜!? 早く連れてきなよ!轢かれちゃうよ!」





私は急いで車から降りて、

大通りの横の歩道をちょこちょこと歩いているヨーキーに駆け寄りました。

両手を差し出して、「おいで」と声をかけると、しっぽを振って手の中に入ってきました。

そっと抱きかかえました。

とても軽くてびっくりしました。





暑さからハァハァとしています。

急いで車に乗りました。

小さなヨーキーが、私を見上げています。

とても大きなクリッとした目でした。

かわいい。。。

2キロもないような、華奢な身体をドキドキしながら抱っこしていました。

思いがけず、犬に触れられたことが幸せでした。






ですが、この子は私に神様が授けてくれた子ではないのです。

幸せに浸っている場合ではなく、

この子を大切な家族の元へ返してあげなくてはいけないのです。

姉とヨーキーのお家探しをはじめました。





大通り横の細道に車をとめ、その界隈の家を訪ね歩きました。

「新しく塀を直した、あの家の犬かも。」と、情報が得られました!

その家の行き方をお聞きし、急いで向かいました。





「新しい塀」という情報で、すぐにそのお家はわかりました。

庭を通り、玄関を見ると、玄関の戸が、10cm位開いていました。

ああ・・・あそこから出てきちゃったんだなと思いました。





「すいません」と声をかけると、中年の男性が出てきました。

ヨーキーを抱っこしている私を見て、すぐに事態がわかったようで、

「ああ〜〜すみません!出ていっちゃったんだぁ〜!」と、しきりに頭を下げられました。

「良かったです。。。」といいながら、ヨーキーをお渡ししました。

良かった。。。

本当に良かった。。。





思いがけず、10日ぶりに犬に触れることができた。。。

それよりも、あのヨーキーが、事故に遭わずに、お家に帰ることができて、本当に良かった。。。

きっとソランが知らせてくれたのだろう。。。

そう思いました。











その翌日。

お供えしているドッグフードがなくなってしまいました。

いつも行くペットショップに行きました。

もうこのお店にくるのも最後かもな〜と思うと、胸がキュッと詰まりました。





ドッグフードを手にし、レジに向かうと、

途中でまた思いがけないものを見てしまいました。

シュナウザーがいました!





ペットショップですから、子犬がいるのはあたりまえなのですが、

サークルの中でやんちゃに動き回っていたシュナウザーは、

既にシュナカットをし、子犬とはいえない大きさのシュナウザーでした。

毛色も黒っぽいソルト&ペッパーの男の子で、ソランと雰囲気が似ていました。





急いでサークルに近寄り座り込むと、シュナが私の方へやってきました。

サークルの間から指を入れると、嬉しそうに顔を押し付けてきました。

「かわいい。。。」

ソランと違って大きな目で、尻尾も長めでしたが、

毛色も黒っぽいせいか、ソランと重ねてみてしまっていました。





この子の紹介が書かれたボードには、11月11日生まれ、男の子とありました。

もう8ヶ月なんだ・・・

胸が痛くなりました。

見ているのが辛くなり、

早く、1日も早く、運命の出逢いがありますように・・・。

そう祈って、お店を出ました。





ソラン

今日はシュナに会わせてくれたの?

可愛かったよ〜。。。

ありがとう。。。











この日の夜、

以前、制作をさせていただいたI様から、久しぶりにメールをいただきました。

2年間、病気と闘っていたB君が、空へ旅立ったとのことでした。

メールでのお話から、たぶんソランと同じ頃に旅立たれたのではないかなと思いました。





小さな身体で、一生懸命頑張ったB君。

「よく頑張ったね。。。」と、思うと同時に、

B君を支えてこられたご家族のお気持ちを思うと、苦しくなりました。

I様は今、私と同じ思いをされている・・・・

そう思うと、どんなお言葉でお慰めしたらよいのか、わからないでいました。






メールを読み進め、

ああ・・・・と、胸がしめつけられました。





「ソランズさんのお人形で供養をしてあげたい。」





今の私に、まさかこのような言葉が届けられるとは思いもしませんでした。

驚きと、嬉しさで涙が溢れました。





動き出さなくては・・・

と、思いながらも、なかなか動けないでいました。

このタイミングで届いたメール。

きっと、ソランからの、

「もうそろそろ動き出さなくちゃだめ!」

という、メッセージではないかと思いました。





こんな私の作ったお人形を、ここまで思ってくださる方がいる。

頑張らなくてはいけないと強く強く思いました。












そして次の日。

ポストに1枚のハガキが届いていました。

昨年10月に、空へ旅立ったC君のママ、Y様からでした。

ハガキには、とっても可愛いシュナちゃんが写っていました。

新しい家族、B君を迎えられたとのご報告でした。





C君が旅立ったあとのY様は、

悲しみに包まれながらも、C君への感謝を常に持たれ、前向きに頑張られていらっしゃいました。

今なら、どれだけ辛いお気持ちで、頑張ろうと努力されていらしたか、わかります。





ハガキの中のB君の可愛い笑顔♪

このB君が見つめる先には、笑顔のY様がいらっしゃるのだ。

きっとその光景を目にして、空の上のC君も、とびきりの笑顔で喜んでいるだろうな。。。と、思うと、

私も笑顔になっていました。










旅立ちも、誕生も、日々くりかえされていること。

わかってる

わかってるよ、ソラン。